新脚紹介~外偏サーキュラー~
こんばんわ。今年のマシンに使っている特殊比スライダーヘッケンについて記事にしようと思います。スライダーヘッケンの性能向上を目指してかなりいい仕上がりになったので、スライダー脚の新しい考え方として面白いのではないかと思います。
区別の為に”外偏サーキュラー”と呼称することにします。意味は後程。
目次
1、新脚の特徴
2、理論
3、軌道設計(Links)
4、作図設計(CAD)
1、新脚の特徴
基本はスライダーヘッケンなので、そのスライダーヘッケンに対するメリット・デメリットは次のよう
メリット
①機構的なクリアランスを無視できる
これが最大のメリットで、スライダヘッケンはクランクヘッケンと比べて負荷切返し点(詳しくは後述)でスライダー溝のクリアランスによるガタが出ます。このガタは寸法を詰めたりすると少なくなるんですが、製作の手間が増えたりもします。その辺もろもろ解決できるのがストレス無く作れてとてもよいです。走りがとても安定します。
②摩耗に強い(削れても大丈夫
上に付随するメリットで、スライダヘッケンにありがちな使っているとスライダー溝がガバになってきて走ってる感じに力強さが無くなってくる問題が無いです。
③切り返しを優しくできる
スライダーヘッケンに限らず脚機構は脚がレバー軸と最も近づく切り返し点で渋くなりがちですが、スライダー円弧を弄ることで切り返しを緩くできます。
④脚軌道を円に近づけられる
ぶっちゃけこれは4枚脚にしてるからなんですが、通常ヘッケンの脚先の軌道を円軌道に近づけると切り返しは渋くなりやすいです。スライダヘッケンなら特に切り返しは渋くなるので4枚脚であってもおすすめはできませんが、③のスライダー円弧をいじることで切り返しをあまり考えずに脚軌道を攻めることができ効率のいい脚になります。
デメリット
①4枚脚限定
詳しくは後述しますが、この脚はスライダー軌道を弄ることに全てが詰まってるので、歩く分だけでスライダー軌道を全て使ってしまう3枚脚ではできません。4枚脚にすることで余裕のできたスライダー軌道を弄ります。もちろん脚を1枚増やす分以上のメリットがあるのでいいんですが、強いて言うなら3枚脚教の人とかは作れないですね(そんな人がいるかは知らない
②設計がめっちゃダルイ
自分史上一番の作図のダルさです。
スライダヘッケンなら
Links軌道設計(てきとう
↓
CAD肉付け(てきとう
で終わるんですが、外偏サーキュラーだと
Links軌道設計(頭使う
↓
CAD軌道修正(禿げる※頭皮の強度に自信のない人は要注意
↓
CAD肉付け(てきとう
って感じで、特に軌道の修正に悩みます。少なくともスライダヘッケンを一回作った事のある人でないと作図は大変だと思います。なので今回は作図についても0から10まで優しく解説します(できるとは言ってない
2、理論
ー魔術師にとってフーダニットとハウダニットには意味がない…重要なのは”どうしてやったか”だ
ーホワイダニット…
-ある夏の日-
そういえばスライダヘッケンって円弧のどっち側を使ってるか気になりまして
そしたら両方使ってることに気づきまして、こりゃあかんと思い至り
スライダーで考えると、左右対称の脚として中間で当たる溝が変わってるんですね
ここを負荷切替し点なんて呼んどきますけど、スライダヘッケンは円弧溝の都合ちょっとのクリアランスが大きなガタになってます
どうにかガタ無くせないかなー、でも寸法詰めるのは大変だなーと悩んどったんですが
脚を半分にすればそもそも切り替えなくなるやん!天才か!とびっくり世紀の大発明
でも脚の長さ足りないなーっと思ったんで
伸ばしたりましたわ!
溝脚理論-完卍成-
スライダヘッケンに応用する時に「どうせ4枚脚になるし軌道も余る(後述)から脚の切り返しも緩くしとこ」っといじってなんやかんやしたやつ↓
(なんやかんやあって)
完卍成
こんな感じに作られたので「外円のみを使い偏った軌道のサーキュラーヘッケン」で外偏サーキュラーと言います。
つまり負荷の切り返し点を無くそうと思って軌道を弄ったら緩い切り返し(脚)と効率のいい脚が付いてきたみたいな感じです。
ちなみに内円を使う事もできるんですが、そうすると脚がめっちゃでかくなったり脚の切り返しを緩くできなかったりするので、外円を使っています。内円の方が歪みにくいとは思うんですが、それ以外の全ての都合が外円の方が勝っています。
3、軌道設計(Links)
軌道設計に行きますが、ここからが面倒です。(Linksはまだ簡単です)
思い出しながら書きます。
ちなみにLinksの使い方の詳細は下記で見てください
https://signed.bufsiz.jp/Links.html
まずはLinks画面を開きます。
オブジェクト数は4にしといてください(3だと振り角が足りないです)
で、この時点でレバー長さを決めます。スライダヘッケンはクランク半径とスライダ軸に入れるベアリングの寸法とカムの接合の仕方を最初に決めたら、必然と最低限必要なレバー長さが決まるので、ここから始めます。
・クランク半径
自分は経験上最低12㎜必要と感じています。
・スライダ軸
スライダ軸は個人的にはベアリング必須で、軸にΦ6のスペーサーを使い外径は12㎜のベアリングにします。これは使いやすさと強度の問題でこれにしますが、外径10㎜でも大丈夫かも知れません。ちなみにそれ以上肉が薄くなると砕け散ります。
・カムの接続
自分は中心にΦ6の丸スペーサーを軸に使いΦ2.5㎜の軸4本で回転止めにしてますので、
クランク半径+7㎜くらいあれば肉が足ります。↓こんな感じ
上の寸法が決まれば、レバー長さは以下の式で決まります。
レバー長さ = クランク半径×2+接続用の肉厚+ベアリング半径+余裕(2~3㎜)
=12×2 + 7 + 6 + 3 = 40㎜
ざっくりどんな寸法になるかは下の画像を見てください。
これは正しくはレバー長さではなくクランク中心からスライダ軸までの距離なんですが、だいたい同じになります(画像の黄色い線が正しいレバー長さ)
でもレバー長さを先に決める方が作図がしやすいので、この手順がおススメです。
レバー長さまでが決まったら、以下の数値を打ち込みます。
・クランク半径
・レバー長さ
・コンロッド長さ→だいたいクランク半径+1~2㎜
・最適化曲線前幅→100
・最適化曲線後幅→10
・最適化曲線高さ→お好きに(ただしレバー長さ+15㎜くらいが下限)
(最適化曲線前幅・後幅については脚の向きによって逆になります)
そうするとこの画像のようになります。
やべー感じになってますが、これで大丈夫です。
この後脚先が美しい曲線になるようにレバーの軸座標を左下側に持っていきます。
レバーのXとY座標を弄ると脚先がこんな感じになります。美しい。
あとは好きに微調整してください。ただ、実際に作図した時に不都合があったらまたLinksでちょいちょい修正するという感じで戻ってくると思います。慣れです。
この軌道の作成の時点で気を付けるポイントとしては、
・折り返し部分は多少余裕を見ておく
折り返しとは膝を伸ばしたような方です。なんとなく15°以上あればいいかなと思ってます。
逆に切り返しは後々CADで調整できるので考えなくていいです。折り返しは調整できないので変に攻めすぎない方がいいと思います。変な負荷がかかったり、最悪反転して動かなくなるので。
・最適化曲線前幅と後幅
多分ですけど、ここを90にするとちょうど脚の負荷切替し点が無くなると思ってます。自分は余裕を見て100まで詰めてますけど、90~100くらいで弄ってもいいと思います。
前幅を決めたら上下動を見ながら後幅も調整してください。ちなみに自分は上下動は0.5㎜くらいは残してます。
・最適化曲線高さ
自由。脚のサイズは邪魔にならなければ大きい方がいいと思ってます。
・レバーXY座標
フィーリング。いい感じに。
以上、Linksの軌道作成についてはこのくらいです。これをスライダヘッケン化しても一応動くと思いますが、切り返しを調整すると格段に動きが良くなるしスライダヘッケンとしての強みも出せるのでとても良いです。めんどくさいですが。